みなさん、こんにちは。らっちです。
アドカレすっぽかしてすいません。忘れてました。
この記事は、今年の2月にしまじゃきさんに声をかけマウス合宿で発表しようとしていたものをレポートにしてしまじゃきさんに提出したモノの改編版です。
私は材料が専門ですが、半導体材料に関しては素人なので皆様からのご意見、ご指摘をお待ちしております。
また、本記事は個人が勝手にやってテキトーに解析しただけであり、いかなる責任も負いません。怒られたら消します。
たぶん僕が書く最初で最後のマウス関連記事。
マイコンの微細観察
らっち
1.
目的
マイクロマウスやロボトレースの制御には多くの場合、マイコンが用いられる。その為、マイコンに関する知識が豊富であり、Twitterやマウス合宿では盛んにマイコンの使い方やプログラムについて議論が行われている。ソフトウェアに関する興味の旺盛さに対し、ハードウェアに対してはサイズやスペックに関する議論はあるものの、材料や構造そのものに関する議論は行われていない。そこで本研究では興味本位でマイコンを破壊し、材料や構造を観察した。
2.
実験
2.1.
試料
本研究で用いた試料は2019年度のマイクロマウス合宿でマイコンについて発表し、マイコンについての知識が豊富なしまじゃきさん(Twitterアカウント @obknt) から提供を受けた。
いただいたマイコンは以下の3つである。
STM32F303
PIC18F2550
TMPZ84
しまじゃきさんからのメモを引用し各マイコンの紹介とする
STM32F303
しまじゃきメモ
現代のマイコン。ミドルレンジっていうのですかね。一番パッケージが小さいのに意外と豊富なタイマー、ADC、DACそしてOPAMPもついている高機能。ROMも十分です。
主な仕様
・シリーズ:STM32F3
・電源電圧:2.0~3.6V
・コア:ARM Cortex-M4
・コアサイズ:32bit
・クロック:72MHz
・プログラムメモリ:64kB
・RAM:12kB
・サイズ:7 × 7 mm
・登場時期:2015年
PIC18F2550
しまじゃきメモ
16bitクソマイコン、PICです。確かこれは書き込み時にとあるピンヘッド9V or 12Vを印加せねばならないモノで、結構古いハズです。
主な仕様
・シリーズ:PIC18F
・電源電圧:4.2~5.5V
・コアサイズ:8bit
・命令長:16bit
・クロック:48MHz
・プログラムメモリ:16kB
・EEPROM:256B
・RAM:2kB
・サイズ:15 × 50 mm
・登場時期:1999年
TMPZ84
しまじゃきメモ
いわゆるZ80(zilog社)ですが、東芝がクロックfregやCMOS化など若干の改善をしたらしいです(知らんけど)。おそらくZ8-からプロセスサイズを変えてないと思います。
主な仕様
・シリーズ:TLCS-Z80
・電源電圧:5.0V
・コアサイズ:8bit
・クロック:10MHz
・サイズ:23.8 × 17.8 mm
・登場時期:1976年(Zilog社製Z80の発表年)
メモリとわかんね データシート読むのメンド
2.2.
観察手法
観察の手順は図に示すとおりである。
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図1 観察手順 |
2.2.1.
樹脂の除去
ご存知のようにマイコンは樹脂でコーティングされており、集積回路を観察するためには樹脂を取り除く必要がある。除去の手法としては薬品を用いて化学的取り除くか、やすり等で工学的に取り除く手法が挙げられるが、本研究ではコストと処理の観点から工学的手法を用いた。
破壊にはリューターとやすりを用いた。その為、集積回路に傷が入った箇所もあるが多くの領域で観察可能な面を得られた。
2.2.2.
光学観察
某超高給取メーカーの光学顕微鏡を用いて光学観察を行った。倍率はテキトーで撮りました。ごめんなさい。
2.2.3.
FIB加工
マイコンの断面観察を行うにあたって、マイコンを垂直方向に切断する必要がある。しかし、工学的切断法を用いると断面性状が不良になり、良好な観察面を得ることが出来ない。そこで、本研究ではFIB加工を用いた。FIB(Focused Ion Beam)加工とは集束させたイオンビームを試料に照射し、加工する技術である。詳細については下記のURLを見ていただきたい。これを用いることにより良好な断面を得られる。
FIBの説明
JAIMA 日本分析機器工業会 集束イオンビーム(FIB)装置の原理と応用
https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/em/fib/
JEOL
https://www.jeol.co.jp/applications/pdf/ib/ib_a001_00.pdf
2.2.4.
SEM,EDS観察
FIB加工後、試料表面および断面をSEM(Scanning Electron Microscope)を用いて観察した。また、EDS(Energy dispersive X-ray spectroscopy)を用いて元素マッピングを行った。金属は電子ビームが照射されるとX線や電子が放出される。放出されるモノのエネルギーは元素によって異なり、これを検出することで試料中の何処にどれだけの元素が存在しているか調べることが出来る。あくまで視野内での存在比率の相対値を示したものであり、他元素との存在位置に関することを述べることはできるが、その地点において他元素との割合を比較することはできない。注意点については後程、詳細に述べる。それを知るためにはスペクトル分析が必要となる。また、正確な組成同定には四重極形質量分析計(QMS)等を用いる必要があるため、本研究では組成割合については言及しない。
詳細はググってくれ
Qualtec
http://www.qualtec.co.jp/case/analysis/eds.php
3.
結果
3.1.
光学観察
写真ペタペタ張っていきます。
図2は3つのマイコン外観を並べたものである。これだけで、マイコンの高性能化と集積技術の向上の目覚ましさがわかる。
図 2 マイコン外観(上からSTM32,PIC18F,TMPZ84)
図3は殻を割った状態の全体図を撮影したものである。
いずれのマイコンにおいても集積回路自体のサイズはパッケージの1/9程度に過ぎず、パッケージのほとんどの領域が脚への配線であることがわかった。
図 3 樹脂を除去した状態(左からTMPZ84,PIC18F,STM32)
図4は各マイコンの集積回路を1000倍で撮影したものである。Z84、PIC18は配線を容易に目で追うことができる。一方、STM32は配線が超高密度になっていることがわかる。STM32は左下あたりをよく見ると配線が見える。
図 4 マイコンを1000倍で撮影した画像(左からTMPZ84,PIC18F,STM32)
3.2.
FIB観察
FIBを用いて断面観察を行った結果を図5に示す。倍率がまちまちなのはごめんなさいテキトーに撮りました。スペックの向上とともに高密度化が進んでいることがわかる。
図 5 FIB観察した画像(左からTMPZ84,PIC18F,STM32)
PIC18F,STM32は面白そうだったので拡大してみた。(図6)
図 6 詳細な断面像(FIB像)(左からPIC18F,STM32)
STM32F3は90nmプロセスルールを採用しているがどこが90nmなのかわからん。
3.3.
SEM,EDS観察
SEMを用いて断面を観察したものを図7に示す。
図 7 断面像(SEM 1万倍) (左からTMPZ84,PIC18F,STM32)
※PIC18F,STM32のSEM像は雑に撮影したため画像が斜めにずれている。ホントは表面に対し垂直に配線が存在している。
ここから各マイコン断面の元素マッピング結果を示す。元素マッピングの見方の注意点として、同一元素の存在比率の相対値を示したものであり、絶対的な量を示したものではない。そのため元素マッピングでは導体部でSiの存在割合が低く示されるが、それは不導体領域と比較して濃度が低いのであり、Al等の他元素と比較して多い、少ないを述べられるものではない。
3.3.1.
TMPZ84
TMPZ84のスペクトル分析を行ったところ、Al,Si,O,Nが主な構成元素であることが判明した。元素マッピングを図8に示す。
図 8 TMPZ84の元素マッピング
不導体はSi+ O+Nで構成されており、導体はAlとSiの合金であると考えられる。EDSを用いて材料の元素の組成割合を断定することは最適とはいえないので、合金組成については述べない。
3.3.2.
PIC18F,
PIC18Fのスペクトル分析を行ったところ、Al,SiO,Ti,Nが主な構成元素であることが判明した。元素マッピングを図9に示す。
図 9 PIC18Fの元素マッピング
PIC18FはTMPZ84と違い、Tiが検出された。存在領域は導体部の上下に存在していた。
スペクトルを提示すると組成について誤解を招く恐れがあるので割愛するが、スペクトルの結果よりNの含有割合はTMPZ84に比べて大幅に減っており、何らかの要因があって材料組成が変更されたと考えられるが半導体材料に関する知識を持ち合わせていないため割愛する。
なんでこーなってるかは半導体に関する知識が無いのでなんもわからん。
3.3.3.
STM32
PIC18Fのスペクトル分析を行ったところ、Al,SiO,Ti,Nが主な構成元素であることが判明した。元素マッピングを図9に示す。
図 10 STM32F3の元素マッピング
主要な組成はTMPZ84と同様に不導体はSi+ O+Nで構成されており、導体はAlとSiの合金であると考えられる。Siのみで形成されている配線のようなモノも確認された。配線により組成を変えているのか?
PIC18Fと同様にスペクトルの結果よりNの含有割合はTMPZ84に比べて大幅に減っており、何らかの要因があって材料組成が変更されたと考えられるが半導体材料に関する知識を持ち合わせていないため割愛する。
組成に関してPIC18FとSTM32で大きな違いは見られない。
4. クソ雑魚ナメクジまとめ
著者は半導体材料に関する知識が0なので、考察するにあたり「半導体プロセス技術の進歩と課題」(https://www.toshiba.co.jp/tech/review/2004/08/59_08pdf/a02.pdf)を参考とした。参考本が一冊であることは適切とは言えないが、めんどくさかったので許してください。このレポートは2004年に書かれたものであり、最新の記事ではないことに留意されたい。
マイコンの観察結果から以下のことがわかる
1.
材料組成、配線の製造手法については1990年代までに大きな発展があり、一定度の技術が確立されたと考えられる。近年は微量な添加元素割合の変化による進歩がある。
2.
PIC18FやSTM32F3で観察されたTiはバリアメタルである。
3.
高密度化は一貫して発展し続けている
半導体に詳しい方にココを深めて欲しいです。
5. 謝辞
本研究にあたり、マイコンを提供していただいたしまじゃきさんにお礼申し上げます。
皆様からのご意見、ご指摘、考察お待ちしております。
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